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戸田家 調査員詳細レポート

テルニー 車椅子・杖/男/45歳 障害:脳性麻痺(アテトーゼ) 職業:自営業
プロフィール:
伊勢志摩の離島に住むという最大級のバリアの中で生活する障害者でありながら、時には函館の朝市で寿司を食し、またある時はお台場の観覧車に望み、はたまた神戸で散策し、倉敷の風情に染まるという、けっこう気ままに旅してきた先進的おじさん障害者。いささか足腰にガタが来て歩行不如意になりつつあるが、その経験にモノ言わせて、伊勢鳥羽志摩の旅のお手伝いができれば幸いです。
調査日:2002−3−31
レポート:
どんな観光地にも「老舗(しにせ)」と呼ばれる宿がある。地元のどんな人に尋ねてみてもその場所を知っているし、どこか自慢そうに話をしてくれる。「戸田家」も、伊勢志摩にあるそんな老舗の旅館の一つだと思う。伊勢志摩の観光の中心、鳥羽駅の近くにあり、しかも鳥羽湾に浮かぶ答志島や神島を望む海岸際に立つ全180室の偉容は、初めて訪れた観光客にさへその存在感を記憶に深くとどめさせることだろう。今回は、そんな「戸田家」に車いすを借りて宿泊した、その模様を紹介したい。

 「戸田家」には「南館」と「嬉春亭」という建物があり、玄関は一つ、南館の1階にある。眼前に鳥羽駅があり、歩いても数分の場所だが、レトロなボンネットバスでも送迎してくれる。玄関前には国道がはしり、伊勢方面から入る分には左折するだけだが、反対の志摩方面から来る車はそのまま右折することはできず、いったんロータリーを左に入って逆の車線に入るという複雑な構造になっているので注意が必要だ。

 駐車場から玄関前にかけての路面も少し気をつけなければならない。国道から玄関に向かってかなり急な上り斜面になっているため、車いすで上るにはかなりの腕力が必要だし、高齢者などの足腰に不安のある人は転倒する恐れもある。ただ、常時数人の係員が待機していて、車が到着するたびに降りる人をサポートしてくれるので、そんな人は先に玄関先で降ろしてもらえばいいだろう。

 玄関を入ればすぐにフロントがある。建物は二つあり、部屋数も多いけれどフロントはここだけということで、時間帯によっては相当に混雑するかもしれない。そのためというわけではないだろうが、フロント前のロビーはコーヒーショップを兼ねて多くのテーブルや椅子が並べられ、宿泊客は外の景色を眺めながら待ち時間を過ごせるようになっている。このロビー、フロントからは少し低くなっているため階段を数段下りなければならない。車いすのためのスロープも作られているが角度が急なので注意を要する。

 何度も書いているように「戸田家」には大別して南館と嬉春亭という二つの大きな建物があり、これが廊下で結ばれて内部は浴場などの施設と相まって、かなり広くて複雑な構造になっている。廊下の途中にはエスカレーターやいくつかの段差があり、それぞれスロープが設置されていて、車いすで単独で移動できないことはないのだが、角度や長さの違い、移動距離や目的施設への案内のことを考えると、最初から係員にサポートをお願いする方が無難なように思われる。もちろんこれは視覚障害者や高齢者にも当てはまるだろう。

 部屋数を見てみると、南館には120室、嬉春亭には60室の客室があるのだが、ベッドのある洋室は南館に1室あるだけで、あとはすべて和室になっている。この和室、入り口の大きさや部屋の広さ、内部の構造などが様々で一概に説明することは難しい。すべての部屋は車椅子タイヤカバーを持参すれば、
畳の上まで車いすでも行けるということだが、上がりかまちには10センチ前後の段差があるので、車いすのまま上がるためにはどうしても介助が必要になるだろう。

 私たちは二人とも車いすを使用しているということで、1室だけの南館の洋室に宿泊させてもらった。ところが、この部屋のトイレのドアに2段の段差があり、つかまり移動のできる私はそれでもこのトイレを使用できたが、車いすから離れられない連れは、館内の車いす用トイレを利用することになった。ベッドではあるけれど、障害者専用の部屋ではないということだ。

 さて、いよいよ楽しみな食事なのだが、夕食の取り方にはいろいろなバリエーションが用意されている。落ち着いて食べたければ普通に部屋食にすることができるし、「和ダイニング」という畳の上にテーブルが並べられた広間で、食べ放題の海の幸のバイキングを楽しむこともできる。また、南館9階のスカイラウンジで宵闇に浮かぶ島々を眺めながら食事を味わうこともでき、ここは夜8時を過ぎればバーになり、回転スカイラウンジとなって雰囲気はさらにいい。この夕食の場所の違いによって同じ部屋でも料金が異なることがあるので、チェックイン時に確認または希望の場所へ変更をしておくことが大切だ。

 なお、「和ダイニング」の畳の上には車いすのまま上がれるが、使われているテーブルが通常より低いので車いすでは足部分が下に入らない。ここを利用するためには別テーブルを用意するなどの工夫が必要となる。

 そんな説明を聞きながら、私たちは9階のラウンジに案内された。外周が回転するために、建物との間には何段かの凹凸があるが、そこには簡易のスロープが渡されて問題はない。窓の外はすでに闇に包まれ、この日は曇っていたために星こそ見えなかったが、薄墨色に沈む海に小さな明かりが瞬く風景はなかなかに幻想的だった。そしてテーブルには、イセエビや鯛のお造りが並び、これでもかと言うほどの料理を堪能することができた。

 料理と眺めが「戸田家」の楽しみであるとするなら、もう一方にはお風呂という楽しみもある。南館、嬉春亭それぞれに男女の大浴場があり、おのおの趣の違った数種類の露天風呂、貸切風呂、家族風呂がある。中には旅館の外に出て、山道の階段を上ってたどり着けるという露天風呂もあるが、もちろんここは車いすで行くことはできない。それぞれの浴場も途中いくつかの段差などがあり、介助を必要とするところも多い。ただ、家族貸切風呂の一つは、内部にスロープや浴室用車いす、てすり付きトイレなどを備え、障害者でもゆったりと温泉を楽しめる作りになっている。3000円の追加料金は必要だが、温泉好きの人には堪えられない施設かもしれない。

 「戸田家」は大きな旅館である。老舗であるということも最初に書いた。それは同時に、旅館と建物の歴史を考えに含めるならば、一面で、バリアフリーの対極にあるということも表している。それは旅館に限らず、伊勢志摩にある
古くからの観光施設が持っているジレンマみたいなものなのだろう。たとえすべての段差にスロープをつけるなどという工夫をしてみても、どこかに無理が見え隠れしてしまうのは仕方のないことなのかもしれない。

 しかし、「戸田家」にあったバリアフリーの本質は、そんなところではなかった。最初、車から降りた時に手を貸してくれた係員の言葉や態度に始まり、案内してくれる人、食事のときに車いすを押してくれた仲居さん、そんな関係
する人たちが持っている真摯な接客が、老舗の歴史に裏打ちされたバリアフリーなのかもしれない。

 そんな難しいことじゃない。物理的なバリアーは、すべて近くにいる係員に遠慮なくアシストしてもらえばいいことなのだ。


しんちゃん 車椅子/男/41歳 障害:脊髄損傷・胸椎10・11番 職業:観光旅行業
プロフィール:平成2年、林業の仕事中の事故で脊髄損傷に。趣味の釣りは車椅子になってからも健在。海釣り歴25年のベテランフィッシャーマンは主に伊勢志摩、紀州の堤防や船着場に足を運ぶ。釣れるポイントはしんちゃんにおまかせ。車椅子テニスも7年続ける。
調査日:2002−3-31
レポート:戸田屋は近鉄鳥羽駅から徒歩5分ほどで行く事の出来る和風旅館です。
 駐車場は少し傾斜が有り、乗降時に車椅子が転がっていかないよう、注意しないといけない。車を玄関に横付けし、旅館の方に言えば、車を駐車場まで移動しても貰えます。
 玄関はスロープになっていて入り易く、フロント、ロビー、館内の廊下は毛足の長い絨毯張りになっていて少し動きにくかったです。フロントには、車椅子用のカウンターがありませんが、ロビーでチェックインすることが出来ます。フロントからロビーへはスロープがありますが、傾斜がきついので介助の必要な方もいるでしょう。館内の至る所にスロープが設置せれていましたが、少し傾斜がきつい感じを受けました。

 客室はほとんどが和室ですが、洋室が一部屋あります。和室は車椅子での入室が出来ないため(車椅子タイヤカバー持参なら入室できます)、車椅子だと洋室のほうが楽です。しかし、洋室のトイレ、バスの入口に15センチの段が2段有るので車椅子では使えませんでした。部屋の広さは車椅子で動くのには充分の広さでしたので、トイレが使用できなかったのは残念でした。館内の障害者用トイレも1階に一ヶ所しかないので少し不便でした。

 夕食は部屋出しと、館内レストランの和ダイニング、回転スカイラウンジのどれかを選ぶことができます。今回は回転スカイラウンジで頂きました。テーブルは問題ありませんでした。沖に浮かぶ船の明かりを見ながら食事取ることが出来、ゆっくり寛げます。

 大浴場は入口に15センチの段がありましたが、フロントに言えばサポートして貰う事ができます。入浴後も脱衣所にある電話で、フロントに連絡すれば問題ありません。車椅子で入り易い貸切風呂もありましたが、1時間3000円は少々高いかなと思いまいた。

 戸田屋は増築改築されているため、館内は非常に広く、また表示が少ないので高齢者の方などは迷いそうです。

 


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